潮時ー25章
このお家に来てアッと言う間に一年が過ぎた。
お姉ちゃんは小さい時に目の大手術をしたけれど、
私はお医者さんの厄介にやったのは下痢ピーくらい。
あれは辛かった。
ご飯食べれなかったもん。
この頃、
お父さんとお母さんが真剣にお話をする事が多くなってきた。
ジッーと聞いていると・・・
こんなお話をしている。
あの頃のゴールドコーストは、
車も人も少なくて平和な田舎町だった。
カフェ探してもどこにもなくて、あるのはパブばかり。
昼間からオージーがたむろってビール飲んで、
陽気に騒いでいる長閑な町だ。
コーヒーが飲みたくなったらホテルしかなくて、
底に粉が沈殿するようなコーヒーもどきで我慢するしかなかった。
日本食レストランといえば中国人経営のナンチャッテしかなく、
お刺身を食べたかったら自分で釣るしかなかった。
日本食の食材もブリスベンから定期的にお取り寄せだった。
今では日本食の大きなスーパーが2店舗もできて、
ほとんどの食材が手に入る。
本当に便利になった。
でもそれと引き換えに
静かでのんびりした田舎町の魅力は失くなってしまった。
日本へ出張に行くたびに、
日本の物価の安さに驚愕し、
この国の物価の異常なほどの高さに呆れ果てる。
「そろそろココも潮時かなぁ〜」
つづく